今回は、M&Aの契約に関して注意すべき事項についてお聞きします。
契約を締結して、会社を売却すれば、ハッピーエンド、というわけではないのでしょうか?

そう思われがちなのですが、実は契約を締結した後、「 ハンコを押した後 」が一番怖いんです。
契約書のたった数行の見落としで、売却後に買い手から多額の損害賠償を請求される『 後出しジャンケン 』のようなリスクも潜んでいます。
多額の損害賠償ですか。契約書のどんな文言に特に注意が必要でしょうか?

例えば、「 表明保証条項 」です。

これは「 会社に隠れた問題はありません 」と売り手が買い手に対して保証するものですが、「 システムに一切のバグがないこと 」や「 未払い残業代がないこと 」など、現実的に不可能なことまで保証させられているケースがあります。
これをそのまま契約すると、売却後に些細な不具合が出た、あるいは、未払い残業代が見つかった、といった場合に「 表明保証違反 」と多額の賠償を求められる可能性があります。
そのようなケースもあるんですね。認識せずに契約書を締結してしまうと恐ろしいですね。

はい、そうですね。

他にも、よくあるケースの1つは「 競業避止義務 」です。
会社を売却して、一息ついた後、社長が知人のビジネスを少し手伝ったり、同業で小さな事業を始めようとしたりすると、「 競業避止についての契約違反だ 」と訴えられる可能性があります。
「 何年間、どの範囲でビジネスをしてはいけないのか 」を厳密に制限しておかないと、社長自身のその後の人生まで制限されてしまいます。
『 後出しジャンケン 』を防ぐには、具体的にどのようなステップで弁護士の先生に入ってもらうのが良いのでしょうか?

まず、仲介会社や買い手から「 契約書のドラフト(案) 」が出てきたタイミングで、絶対にハンコを押さずに我々に見せてください。
我々が売り手である社長の側に立ち、大きなリスクになりかねない条項も含め、洗い出しを行います。
洗い出した後は、どうするのでしょうか?
相手方に「 この条件は嫌だ 」と伝えることも勇気が要りそうです。

そこも我々の腕の見せ所です。
ただ「 この条件には合意できない 」と突っぱねるのではなく、相手も納得できる代替案を作ります。

例えば、「 一切のバグがない 」という文言を「 売主が知る限り、重大なバグはない 」と修正したり、「 万が一賠償する場合も、上限を売却価格の10%までとし、請求できる期間は1年以内とする 」といった売主を守るための条項など、具体的な対案を作成します。
なるほど。それなら交渉も前に進みますし、社長のリスクも軽減できますね。

はい。
必要であれば我々が直接交渉の窓口につくことも可能です。

M&Aは誰もが自分に有利な契約を結ぼうとするシビアな世界です。
社長が一生かけて情熱持って育てた会社の価値と、その後の人生を守り抜くための防波堤として、ぜひ我々を活用していただきたいです。
