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押さえておきたい法務知識 Vol.9 / 企業価値を削る『 見えないリスク 』

今回は、IPOやM&Aを進める中での『 見えないリスク 』についてお聞きします。

経営者の皆さんが「 このくらい大したことない 」と思っていることが、M&Aでの大きな問題になったり、IPOの審査ストップに繋がる現実があります。。

具体的にはどのようなケースがあるのでしょうか?

例えば、M&Aで会社を売る立場の場合、「 未払い残業代 」などの労務問題です。

「 うちは固定残業代を出しているから大丈夫 」「 彼らは管理職だから残業代は不要 」と社長が思っていても、法的に要件を満たしていないケースが非常に多くあります。

買収時のデューデリジェンス( 精密検査 )で「 過去に遡って数千万円の未払いリスクがある 」と発覚し、その分まるごと買収価格から引かれてしまうこともあります。

例えば、1日1時間未払い残業代が発生していたとします。

1時間なんて大したことないじゃないかと思うかもしれません。

しかし、年間の営業日が245日だとして、単価が2,000円だった場合、245日×2,000円は49万円です。

未払い残業代は3年が消滅時効ですので、3年分あると、約150万円となります。同じような人が社内に10人いると1,500万円となります。

少しずつの積み重ねでも、非常に大きな金額になることがあります。

なるほど、労務問題が影響するのですね。他にはどんなケースがありますか?

「 契約書の不備 」も致命傷になりかねません。

例えば、買収する場合に、買収対象会社の売上の大半を占めるメインクライアントとの契約書に「 チェンジ・オブ・コントロール条項 」が入っている場合です。

これは「 株主が変わったら、契約を解除できる 」という条項で、これを見落としたまま会社を買収すると、経営陣が変わったことで取引を解除されることがあります。

そうすると、一番重要な取引先を失い、会社の価値が大きく減少するリスクがあります。

中小企業特有のリスクなどはあるのでしょうか?

実は多いのが「 社長個人の不動産 」の問題です。

本社の土地は会社のものだけれど、本社建物が社長個人の持ち物で、会社との間にきちんとした賃貸借契約がないケース、あるいは、その逆で、土地は社長のもので、建物は会社のもので、賃貸借契約がない場合などです。

土地や建物の使用権限が明確ではないケースの場合、M&A後は社長が変わるため、その不動産を引き続き使用できるのかが問題となってしまいます。

また、グループ会社から一部の部門を買うような場合は、今までグループ会社全体で導入していたから使えていたITシステムや経理機能が突然使えなくなる「 スタンドアローン・イシュー 」と呼ばれる問題が発生することもあります。

そういった事態を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?

日頃からの「 法務の整理整頓 」が必要です。

法務を整えることは、ただの守りではなく、会社を高く評価してもらうための「 磨き上げ 」です。

問題が発覚してから慌てるのではなく、事前に我々のような専門家とリスクを洗い出し、クリーンな状態にしておくことが、重要です。

具体的には、「 法務の整理整頓 」というのは何から、どのように進めていくものなんでしょうか?

まずは「 会社の健康診断 」から始めます。

「 会社の健康診断 」というのは、法務や労務に関する健康診断ということです。

例えば、現在の就業規則や雇用契約書、そして主要な取引先との契約書をチェックし、どこに爆弾が隠れているか、リスクの全体像を洗い出します。

まずはプロの目で現状を把握するんですね。リスクが見つかった後はどうするんですか?

すべてを一度に完璧にするのは現実的ではないので、「 IPOやM&Aに向けて、いつまでに、どのリスクから順番に消していくべきか 」という優先順位をつけます。

例えば「 この契約書はすぐに巻き直し(再契約)の交渉をしよう 」「 就業規則は来期からこう変えよう 」といった具合に、スケジュールを引き、改善を一緒に実行していきます。

やみくもに直すのではなく、弁護士の先生と一緒にロードマップを作って戦略的に進められるなら、経営者も安心ですね。

はい。

法務を整えることは、ただの守りではなく、会社を高く評価してもらうための「 攻めの法務 」、つまり「 会社の磨き上げ 」です。

ぜひ本格的に動き出す前の早い段階で、一度ご相談いただきたいです。